嘘のはなし

全部作り話です

朝、いつも9時に起きる。たまに起きられなくて11時ごろまで寝てしまう。私の活動時間は昼から深夜3時くらいまで。夜は眠い目を擦りながらブルーライトに照らされて、ネットの海に潜り込む。TwitterInstagramYouTube、飽きたらNetflixAmazon primeで映画を観たり、たまにはラジオを聴いたりする。大体、途中で寝てしまうのだけれど。深夜のラジオはいい。オールナイトニッポンを流していればそのうち眠れる。それは菅田将暉星野源がどんなに魅力的で面白い話をしていても。

私は夢の中で体育館といえば中学1年生の頃半年間だけ使っていた第2体育館だ。中学に入学して半年で校舎の建て替え工事が行われ、私たちは夏休み明けからプレハブ校舎に移動した。新しくなった第一体育館は中学3年生から高校3年生の4年間も使っていたというのに、私の夢には出てこない。いつも、半年しか思い出のない狭くてこぢんまりとした第二体育館が現れる。私は当時、吹奏楽部に所属していて、体育は大の苦手だった。だから体育館にいい思い出はない。使うとしても第一体育館の広いステージを借りて、文化祭や演奏会のゲネプロを行う時だけだった。なのになぜ第二体育館だけ、いつまでも私の記憶に付いてくるのか?

このことに気づいたのはちょうど2ヶ月前のある日だった。その日も仕事で疲れて帰ってきているのに、すぐに寝ようとはせずダラダラとただ時間が経つのを待っていた。気づけば夢の中、第二体育館の狭くて薄暗くてじめっとしたあの空気の中で、切れかけの電灯の下で、バスケットゴールを眺めていた。夢の内容はよく覚えていない。ただ、体育館が出てくる時はいつもなんだか懐かしい雰囲気があった。その通常より小さな空間に愛おしささえあった。

私は体育は苦手とはいえ、真面目な生徒だった。中学1年生のとき、「ラジオ体操第一」のテストがあった。他の生徒が恥ずかしがって適当にこなす中で、私は人一倍張り切ってやっていたのだろう。満点は私だけだった。その時の嬉しさが記憶の奥底にあるのかもしれない。第二体育館はいい思い出がある場所だ、と。 

目が覚めると、夢の内容は消えていく。断片的に思い出せることがあっても、今まで観ていたシーンはどんなシチュエーションだったか、どんな人が何をしていたかなんて思い出せなくなる。ただ、私は第二体育館にいたという記憶だけがぽつんと取り残されている。